冬虫夏草の基礎知識」「学名について」

 バッカクキン目に入るキノコには麦角や冬虫夏草をつくるのがある。オオムギ、コムギその他のイネ科の雑草の穂の一部に黒っぽいネズミの糞のより小さなものができることがある。これを麦角といい、バッカクキンClaviceps purpurea(クラウィケプス・プルプレア)が作った菌核である。属名は「棍棒状の頭の」、種小名は「紫の」という意味で、どちらもラテン語由来。

 冬虫夏草は昆虫に寄生した菌がキノコを作ったものをいう。冬は虫、夏は草の姿になると信じられ、中国では強壮剤にも、また一部では食用にもされる。冬虫夏草は100種位が知られていて、蝶や蛾の蛹・幼虫につくサナギタケ、カメムシの成虫につくミミカキタケ、ハチの成虫につくハチタケ、セミの幼虫につくセミタケなどは有名である。これらは全部Cordyceps(コルディケプス)という属に含まれる。この属名はギリシア語のkordylë(瘤)とラテン語のceps(頭)の複合語で、これらのキノコのてっぺんがふくらんでいるための命名である。セミタケCordyceps sobolifera(ソボリフェラ)。種小名はラテン語形容詞で「芽を生じた」。本属名は造語上はCordyloceps、あるいはギリシア語源でCordylocephala、 ラテン語源でNodicepsとすべき学名である。