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名の由来は、本来、中国の特産種の呼称でした

 冬虫夏草というのは、今では昆虫などから出るキノコの総称として使われていますが、本来は、コウモリガの幼虫(イモムシ)から出たひとつの種を指していました。学名をCordyceps sinensis(コルジセプス・シネンシス)とつけられています。
 この種は、中国の伝統医学・漢方のなかで薬用として使われ、清朝時代の医学書、呉儀洛の「本草従新」(1757年)に始めて記載されています。最近の研究では、これより早く、チベットの薬物書の「甘露宝庫」(1400年ころ)に記載があり、チベットで薬物として使われていたものが、中国中央に伝わったと考えられています。
 イモムシとキノコが合体したかたちは、冬は虫で夏は草と、転生する生き物を想像させるのに十分です。名称もここからきたと考えられており、また、漢方と深くかかわっている陰陽五行説の考え方も映した命名として興味のつきないところです。
 漢方で使われる冬虫夏草は、現在の四川、雲南、青海、甘粛、チベットからネパールの三千から四千メートルの高山帯に分布するものです。中国ではシネンシスやセミなどから生ずるものなどを含め総称して「虫草」と呼んでいて、シネンシス以外の種も、生薬として使われているものもあります。